記憶メディアを買ってくるのも面倒なのでここに載せちまう。

 傘を食べられたので雨の中濡れて帰る。
 モンスターはいつだって突然に襲い掛かってくる。「予言なんて信じない」と、天気予報を全く信じようとしないでいつもずぶぬれになる馬鹿な友人のことを思い出して笑いそうになったけど自分がずぶぬれじゃ笑えもしない。満足に笑うことすらできないのも全部モンスターの仕業だ。なんてったってこの世の悪意は全部モンスターの仕業なんだから。そう思えばどんなことでも笑って許せる。わあ、モンスターのおかげで笑えるんだ。世界ってステキで満ちてる、なんておめでたい発想だって出来るのだ。ただ困った事に私の悪意がその笑みを皮肉なものに変えてしまっているのだけれど、それだってモンスターの仕業なんだ。この世の悪意のすべてはモンスターの仕業なんだから。
 ひとしきりモンスターに不満をぶつけると、お腹が空いてることに気付いた。ぬれねずみが入り込めるような食事処に思い当たる節が無いでもない。ないでもない? 考えるとイマイチ良くわからない言い回しだな。ないでもない。ないでもないという響きが気に入ったのでないでもないないでもないと言いつづける。するとないでもないはナイデモナイという魔法の言葉に生まれ変わってあっという間に目的地まで私を運んでくれるのだ。ナイデモナイナイデモナイ。
「ナイデモナイ!」
 ごめんくださいという言葉すら忘れてしまった私は妙な挨拶をしてしまうが相手には相手にもしてもらえない。寂しかったのでもう一度つぶやいてみる。ナイデモナイ。
「……なんなんだよ!」
「ん……。魔法の言葉」
 呆れているのが伝わってくる。ステキなのにな、ナイデモナイ。
「わけわかんねーよ、しかもずぶ濡れだし。こないだ買った傘はどーした?」
「……モンスターに食べられた」
 呆れているのがまた伝わってくる。この世の悪意は全部モンスターの仕業なのに。
「わけわかんねーよアンタ」
 そういうあんただって天気予報を予言だとか言う変人の癖に。
「言いたい事があるならはっきりしろ」
「……ナイデモナイ」
 呆れ果てたのが伝わってくる。お腹すいてるのにな、ご飯まだかな。
 せっかくこの家に寄ったのにご飯がなかなか出てこないのもきっとモンスターの仕業に違いないと思って、ナイデモナイとつぶやこうとしたけれど、それをするとますますご飯が遅くなりそうな予感がしたから止して、ナイデモナイの魔法は切れてしまったんだと私は自分に言い聞かせた。それなのに友達はお説教を始めてしまい、ご飯はまだまだ先のようだった。こんな感じに、いつだってモンスターは突然に襲い掛かってくるのだ。
 
そんな感じで思いつくままにつらつらと打った小説。ろくに読み返してすらいないので出来は微妙なのだろうと思う。
帰省中なのでメールに添付して保存とかも考えたけれどここに乗せるのが一番手っ取り早く京都に持って帰れるな、と思ったものでつい。